■ ファブシステム研究会設置趣意書



目的
21世紀のあるべきファブシステムを創造するための諸活動を目的とする。

背景
 昨今、半導体産業は大量生産性の向上を目的として、投資のメガ競争を繰り広げている。 しかし、現実には、生涯生産個数10万個平均のシステムオンチップ(SoCチップ)や本来1個からニーズのあるエンジニアリングサンプルなど、大量生産が必要でない集積回路チップ種が無数にあり、 また、コスト高で成立していない各種ユビキタスチップやロボット制御チップなどの仮想的マーケットの具現化が求められている。 現在の半導体製造システムは、本来的に大量生産に適しており、このような変種変量向けチップの製造には、CPU等の大量生産品と比較して、数倍から数百万倍のコストがかかってしまう現実がある。 大量生産システム自体を見ても、過去生産性向上に最も寄与してきたウェーハサイズの今後の拡大は、次期450mmシステムの世界開発費が11兆円と見積もられたことで、 当面頓挫し、この生産性向上の最大の手段を産業として失いかけている。 そのような課題を解決し、投資効率と資源生産性及びエネルギー生産性で高い性能を持つ明日の半導体デバイス製造システムの成立を目指して、 変種変量に適したものづくりシステムを構築すべき時期を迎えている。
 さらに、シリコン系集積回路だけでなく、MEMS系や化合物半導体系なども含め、量産に移行する前段階の手作りファブは、我が国では多数存在している。 これらのファブにおいては、過大な量産性を有するシリコン系大量生産システムを流用や改良する以外に、量産化や高効率生産への発展の道がないのが現状である。 シリコン系大量生産システムの導入で発生する莫大な研究開発と設備投資は、これらの小さなマーケットでは回収できる見通しが立たない。結果として、ファブの競争力強化を阻害している現状がある。
 一方、産業技術総合研究所においては、変種変量生産に適し資源生産性とエネルギー生産性に優れたミニマルマニュファクチャリング(MM)テクノロジーの研究開発が、 個別要素技術開発として以前から進んでおり、このテクノロジーを、小さなファブとして結実させるための、「半導体システムイノベーション検討会」が2007年6月から立ち上がっている。 ファブの変種変量化と投資効率向上という課題に対して、MMテクノロジーと小さなファブという概念は、本質的な解決策となりうる可能性がある。
 本研究会は、このような現状とニーズを踏まえ、現状のファブシステムの課題を抽出するとともに、これからのファブシステムの姿を創造する場と位置づけられる。

活動事項
(1) ファブシステムの現状課題を議論し、そこから普遍的課題を抽出する。
(2) 抽出された課題を克服するファブシステムを創造する。
(3) 21世紀にふさわしいファブのあるべき姿を、広く社会に提案する。

設置期間
平成20年4月1日設置。1年間の時限とする。情勢を鑑み必要に応じて、1年ごとに設置を更新する。

研究会の構成
 本研究会は、本研究会発起人を代表として、その趣旨に賛同し、その実現のための創造的活動に参画する意志を有し、かつそのための諸活動に資する企業や組織または個人が、その業種や分野を超えて集い、構成する。 構成企業や個人は、それぞれ最低1名常任委員を選任する。 また、産総研は、半導体システムイノベーション検討会メンバーを中心とした委員およびアドバイザーにより構成する。 本研究会には、常任委員の他、同一企業内で委員を支援・補佐する委員補佐、および、不定期に活動に参加する委員として協力委員を置くことができる。

研究会の情報管理
1) 本研究会における秘密情報の適切な管理と知的財産権の保護の為、研究会を構成する組織または個人は、独立行政法人 産業技術総合研究所と、個別に1対1の秘密保持契約を締結する。 本項目において、その秘密保持契約の秘密情報の取り扱い内容を定義する。
2) 本研究会において研究会を構成する組織または個人より開示される情報については、原則的に「研究会の構成」で定めた研究会組織で共有する。また、その用途と内容に応じて管理レベルを設定し、各レベルに応じた開示先の制限を行う。
3) 本研究会の秘密情報に当たらない活動成果に関しては、本研究会を構成する組織または個人の合意を得た成果について、合意を得た委員名と所属を有識者として記名したリストとともに一般公開するものとする。
4) 本研究会の活動成果として知的財産権が発生する場合は、別途産業技術総合研究所と締結される秘密保持契約書に従い、権利の帰属及びその取り扱い等に関し、その都度、必要に応じて協議の上で決定するものとする。

会議
・委員は、「活動事項」で定めた内容を遂行する会議に必要な資料を準備し、積極的に発言する。委員がやむを得ず欠席する場合には、代理人の出席を可能とする。
・10月を目処に提言を行うことを目標として、集中的日程(2〜3週間隔)で会議を開催する。
・開催場所は、産総研つくばセンターとする。
・開催日時は、原則的には月曜日14時〜16時半とする。


その他の事項
活動費は募らない。ただし、若干の懇親会費のみ必要に応じて徴収する。

平成20年4月1日設置